ジルコニアセラミックスの基礎知識

ジルコニアとは

酸化ジルコニウム(ZrO2)のことを一般的にジルコニアと呼んでいます。
一般的な性質としてジルコニアは2700℃近い高融点の物質で、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。
しかし、ジルコニアは温度帯によって結晶の形(結晶系)が変わってしまいます。この現象を相転移とよび、相転移する温度を相転移点と呼びます。
純粋なジルコニアの場合、1000℃で単斜晶(ティッシュボックスのように全て長方形を組み合わせた箱形の結晶)から正方晶(長方形と正方形を組み合わせた箱形の結晶)に相転移を起こします。このとき体積が大きく変わるため、ジルコニアセラミックスは割れてしまいます。
 そこで多くのジルコニアセラミックスは混ぜ物をして温度を上げても相転移を起こさないようにしてあります。一般的にはMgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)やY2O3(酸化イットリウム)等を混ぜます(これらを安定化材と呼びます)。これらの安定化材が結晶に十分な量溶け込むと、ジルコニアは液体になるまで転移を起こすことがなくなります。これを「安定化」といい、CaOで安定化した物をCaO安定化ジルコニア、Y2O3で安定化した物をY2O3で安定化ジルコニアと呼びます。

ジルコニアセラミックスで注意すべき事

1.ジルコニアの純度について
ジルコニウムは同じⅣa族のハフニウムと化学的性質が類似しているため、分離することが非常に困難です。また、酸化物となったジルコニアとハフニアでも物理、化学的な性質に余り違いはないようです。その為、通常の工業用原料ではジルコニア+ハフニアという形で純度を制御しています。
上記の理由でジルコニア単体の純度を指定したり、ハフニア単体の純度を指定して、セラミックスを発注されますと非常に高価な製品になります。結果、ジルコニア+ハフニアという形以外では商品が流れませんので、この形態で商品を作ることがセラミックス業界の「暗黙の了解」となっています。また、組成の表示もZrO2+HfO2をZrO2と表示することが多くあります。小社サイトでも同様な表示をおこなっております。
ジルコニアとハフニアの存在比率は出発原料である天然のジルコンサンドに左右されるため、一般的な数値として出せる物はありません。「ジルコニアとは」で説明したように未安定ジルコニアは非常に割れ易いので、未安定ジルコニアセラミックスはあまり作られておりません。従って、通常はジルコニアの純度を指定された場合は、ジルコニア+安定化剤で純度を制御する事になります。
つまり、ジルコニアセラミックスの純度はジルコニア+ハフニア+安定化剤の純度を指すことになります。

2.安定化材について

  • 全ての結晶を安定化させるのには理論上、安定化材を約5~10wt.%程度入れれば良いと言われています(もちろん安定化材の種類によって入れる量はは変わります)が、理論値に近い量しか入れない場合大変な労力と時間が必要となってしまうので、工業用原料では、完全安定化をさせるに理論値よりも多くの安定化剤を入れているそうです。そのため、完全安定化ジルコニアでは安定化材が単独で存在してしまう場所があるため、強度の低下や高温時の化学反応などの問題点があると言われています。
  • 一部の結晶が安定化していないジルコニア(部分安定化ジルコニアと呼んでいます)も作られています。これは部分安定化ジルコニアで破壊じん性が大幅に改善されるなどのメリットが発見されたり、完全安定化をさせると、様々な問題が発生するためです。しかし、安定化していない部分があるために何度も熱を加えると結晶が破壊され割れやすくなる等の問題点があるといわれています。多くのセラミックス製品は部分安定化ジルコニアで作られているようです。
  • 十分安定化する量を入れても原料の製造方法によっては完全安定化していないジルコニアもあるようです。従って、入っている安定化材の量だけで完全安定化しているかどうかを判定するのは困難です。
  • 日本国内で使われる安定化材は主にCaOとY2O3です。それぞれの特徴としては、
    CaO・・・素材そのものが安価であるのと、安定化の作業が容易なため、材料費を低く抑えることができます。その反面、結晶中で安定化剤が比較的動きやすいので、高温、長時間で使用した場合「脱安定化(安定化ジルコニアの部分が少なくなる)」現象が起こりやすいという欠点があります。
    ・・・結晶中で安定化剤が動きにくいので「脱安定化」現象が起きにくいが、素材そのものが高く、安定化もしにくいので高価な製品になるといったものがあるそうです。
  • 緻密質の製品は原料を含め、Y23で安定化された物か未安定のものが市場流通量の大半を占めるため、他の安定化材を選んでも価格的メリットはないようです。

3.物理的性質について

  • 文献によれば安定化材の影響により、ジルコニア中の酸素は移動しやすくなってしまいます。酸素の濃い場所から薄い場所へジルコニア自身を介して酸素を運ぶことができます。
    この性質を利用して安定化ジルコニアは酸素センサーに利用されているようです。しかし、この性質のために、低酸素雰囲気で利用しますと、他の材料と比べ酸素が抜け易くなってしまい、結晶中の酸素が少なくなって金属ジルコニウムの量が増えるため、融点や電気抵抗が低くなる傾向があるそうです。
  • 文献によれば、ジルコニアは他のセラミックスに比べ電気抵抗が低くなっています。これは酸素が移動しやすくなっていることからくる性質です。高温ではこの性質が顕著になります。
    この性質を利用して発熱体として利用されているようです。このため電気炉の絶縁体等に利用されますと、途中からジルコニアにも電気が流れ絶縁体として役に立たなかったり、最悪ジルコニアセラミックスが熔けてしまうことが予想されます。(電気は酸素や安定化材をジルコニアの結晶中で移動させる事により流れるので、安定化剤の濃度の変化も予想されます。)
  • 文献によれば、ジルコニアは電子伝導性を示すことがあります。通常のジルコニアには電子伝導性は存在しませんが、高温で非常に強い還元雰囲気下に置くと電気伝導性を生ずることがあります。例えば、カルシアを7.5wt.%入れて安定化させたジルコニアを1000℃で酸素分圧を10-21Pa程度まで下げるとn型半導体となり、電子伝導性を示します。
    ジルコニアはTiO2やZnOと比べ、遙かに安定ですが、アルミナやシリカと比較すれば不安定ですので、物理的性質が変化します。

産学協同研究

当社では平成23~25年度にかけて、東北経済産業局から委託された東北大学との戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に参画しております。
研究テーマ:「機能性合金材料の形状制御結晶育成用坩堝材の開発」